ドン、バン、ズン。五感に響く!

諏訪が大切にする花火大会は地元との密接な関係から作り上げられたもの

PROFILE

 

諏訪市・大舘道彦氏

歴史が長く、かつ全国的に有名な諏訪湖祭湖上花火大会と全国新作花火競技大会という二つの花火大会を開催する長野県諏訪市。さらに夏休みの期間中、35日間も開催されている諏訪湖サマーナイト花火と、まさに諏訪は花火の町になっている。2019年、令和元年になり、さらなる高みを目指す諏訪市の経済部長・大舘道彦氏に諏訪の花火の歴史から、その魅力、そしてこれからのことを訊いた。

目で、耳で、そして体で楽しむことができる諏訪の花火

――諏訪というと、諏訪湖祭湖上花火大会と全国新作花火競技大会の大きな花火大会が二つも開催されるということで有名ですが、まずは二つの花火大会の歴史からお聞かせ願えないでしょうか。

諏訪湖祭湖上花火大会は昭和24年に第1回が開催されたのですが、終戦直後の混乱の中で市民が一日でも早く明るい気持ちをもって立ち直ってもらいたいっていうことから始まりました。2019年、令和元年で71回を数える歴史が長い花火大会です。ナイアガラ花火、水上スターマインといった諏訪湖祭湖上花火大会ならではの花火はもちろんですが、諏訪の花火の特徴として基本的に地元企業、もしくは地元に関係した企業以外は協賛金を受け入れていないということがあります。

――それはどういった理由から地元企業のみの協賛にされているのでしょうか?

例えば景気が良いとどこかの大きい企業から協賛したいと言われるのですが、景気が悪くなるとすぐに撤退してしまう。しかし地元の企業であれば、ちょっと景気が悪くても、逆にだからこそ協力しようということがあったり、協賛金が一定のレベルを保つことが出来る。そもそも地元企業を大切にして、地元企業が作ってくれている花火大会であるからこそ、長く続いてきたと思っています。花火大会は全国的に増えていますが、やはり運営にお金がかかる。それがこれだけの規模で維持、開催できているというのは、地元企業を大切にしているから、そして地元企業も諏訪湖祭湖上花火大会を大切にしてくれているからだと思っています。

――40000発というのは国内で最大規模だと思いますが、その規模が維持されていて長く続けられているのは、そういった理念からなのですね。

実は打上発数の統一した数え方というのは決まっていないのですが、公表している打ち上げ数では国内では一番大きいと思います。

――そしてそんな花火大会のためだけに作られた人工島・初島があるというのも特徴的ですよね。

諏訪湖の湖畔から花火を打ち上げるために、初島という人工島を昭和29年(1954年)に作ったんです。実は初島以外にも、花火を打ち上げるために、毎年、仮設の打ち上げ台を作っています。

――初島以外にも湖の上に打ち上げ台を毎年作られるのですか?

そうです。初島からは尺玉、一番大きい花火を打ち上げるのですが、それ以外の花火を打ち上げるために仮設の打ち上げ台を作っています。というのは、諏訪湖は湖(みずうみ)となっていますが、実は一級河川に区分されているんです。現在の法律では河川に打ち上げ台を常時設置することができない。なので毎年打ち上げ台を作り、花火大会が終わると解体しているんです。

――そういった毎年花火大会を開催するためのご苦労があるわけですね。そして、もう一つ、諏訪湖の花火大会と言うと、約2kmにもわたるナイアガラ花火が有名ですが、こちらも毎年湖上に設置されるのでしょうか?

そうですね。このナイアガラ花火は昭和25年の第2回から始まっていて、初島を中心として設置されるのですが、最初は200mだったものが、現在では10倍の2kmにもおよぶ諏訪湖の花火の一つの名物になっています。

――ナイアガラ花火もほぼ初期から続いているのですね。

70回を超えている花火大会というのはそうはないはずです。もう一つの諏訪湖祭湖上花火大会の特徴である水上スターマインも昭和50年の第27回大会からで、水上スターマインというネーミングは諏訪湖祭湖上花火大会からです。そしてキスオブファイヤーといって、花火が左右からだんだん近づいてきて、キスをするみたいなイメージからキスオブファイヤーと名づけられました。いわゆる水上花火はあちこちで開催されているのですが、花火が動いていくのは諏訪湖祭湖上花火大会になります。

――なるほど。歴史の長い諏訪湖祭湖上花火大会だからこそ、オリジナルの花火を作り上げてきたんですね。

かつては、2尺玉や3尺玉を打ち上げていたこともあるのですが、大きな花火を打ち上げるためには、保安距離というのがあり、結局観覧できる場所から離れた場所で打ち上げることになる。そういう意味では一番バランスがいいのが尺玉なんです。初島からの打ち上げはその保安距離のギリギリで、本当に目の前で花火が打ち上げられる迫力がある。それに他の大きな花火大会のほとんどが、河川敷や海沿いの平地で行われていて、音が逃げてしまうのですが、諏訪湖は四方を山で囲まれているので音が逃げない。目で、耳で、そして体で楽しむことができるのが魅力だと思っています。

――昨年、諏訪湖花火大会に来させていただいたのですが、打ち上げの音が本当に体全体に響くのでびっくりしました。

昔はホテルの窓ガラスも今のようにそんなに良いものじゃない時は、窓ガラスが割れてしまったという話もあるぐらいですからね。今はそんなことはないのですが、それぐらい音と衝撃は諏訪湖祭湖上花火大会の特徴になっています。

――もう一つ9月に開催される全国新作花火競技大会の歴史もお聞きしたいのですが。

全国新作花火競技大会は、昭和58年に第1回が開催されたのですが、当時の日本交通公社、今のJTBが「諏訪明神ふるさと祭り」という地元のお祭りとコラボレーションした花火大会がルーツになっています。それを続けているうちに、2000年の平成20年に現在の「全国新作花火競技大会」に変わり、現在も続いています。

――開催当初から、花火師さんが集う競技会形式だったでしょうか?

現在の競技形式になったのは平成7年の第13回からで、第2回から日本煙火芸術協会員約30社が参加して新作花火を発表していて、そこから参加する花火師さんが増えていき、現在のような形になっています。

――なるほど。こちらも36年の長い歴史があるのですね。話は変わりまして、諏訪は、諏訪湖祭湖上花火大会、全国新作花火競技大会という歴史の長い二つの花火大会が有名ですが、花火大会を基盤にして、地域資源の活性化というのはどのように進められているのでしょうか?

諏訪湖祭湖上花火大会が開催される日は約50万人のお客様が来られるのですが、より有機的に結び付けられるようにと動いています。諏訪大社は全国に約1万の分社がある諏訪の総本社が諏訪大社ですし、霧ケ峰高原、もちろん諏訪湖。それから温泉もあります。上諏訪温泉は実は湧出量は全国で5本の指に入る全国でも屈指の温泉地なんです。それに真澄さんのように日本酒の酒蔵もあり、味噌などの食文化もあります。もっと体験型の観光を増やせるように地域の皆さんと協力して盛り上げていければと思っております。

――花火大会を起点として、より滞在型の盛り上げ方を考えられているわけですね。ちなみに外からのお客様、いわゆるインバウンド重要はあるのでしょうか?

最近でこそ海外からのお客様が増えてきているんですけど、例えば、富山に遊びに行って、東京に戻る際、その途中の諏訪に宿泊されて翌日には東京に帰られてしまうということが多いのが現状です。なので諏訪は宿泊されるお客様が結構いらっしゃられるのですが、諏訪を目的に来るというお客様がなかなか多くならないのが現状です。最近は花火を目的に来られる外国の方が増えてはいるのですが、まだまだだと思います。

――諏訪では7月21日から8月25日までの35日間「諏訪湖サマーナイト花火」(※8月15日は諏訪湖祭湖上花火大会が開催)が毎日開催されています。夏休みにいつ来ても花火を見れるというのは凄いことだと思います。

8月15日の諏訪湖祭湖上花火大会、そして9月7日の全国新作花火競技大会は、有難いことにリピーターのお客様が多く、ホテルや旅館は1年前ぐらいから予約が入り、ほぼ満室状態になってしまうんです。そこで、もっとゆったりと花火を見ていただきたい、さらに夏休みの期間、毎日やっていればお客さんがいつ来ても花火が見れるようにしたいということから始まりました。15分の短いものですが、実は2種類の花火が交互にうち上がるようになっています。毎日同じ花火では、せっかく連泊してもらっても、「あれ?これ昨日と同じ花火だよね」となってしまう。それが2種類あれば、2泊しても違う花火を楽しむことができるという、工夫をしているんです。

――それはいいですね。子供連れだと2泊できると親も楽ですし。そして違う花火を楽しめるのはお得に感じます。夏休みはやはり連泊される家族連れが多いのでしょうか?

そうですね。連泊していただけるお客様は増えています。それに地元の人たちも、夏はホテルのビヤガーデンで花火を見る人も多いですし。だから「諏訪湖サマーナイト花火」期間中の諏訪湖畔は花火が打ち上がる時間帯はかなり人が多い。打ち上げ場所近辺は車も渋滞するくらいですから。

――どうしても花火大会では渋滞は避けられないとは思いますが、渋滞に対する対応策などはされているのでしょうか?

正直、渋滞への対応は難しい部分があります。ただ、いらっしゃられるお客様が皆さんたちも工夫されるようになってきていて非常に込み合う諏訪湖祭湖上花火大会と全国新作花火競技大会の日は、例えば松本など少し離れた場所に車を置いて、電車で来られるようになっています。本当はシャトルバスが運行できればいいのですが、そこは今後の課題になっています。

――そこは場所柄の悩みがありますよね。湖があってそこに繋がる川があることで、道幅の制限はありますし。

正直に言ってしまうと、長岡や大曲といった広い河川敷があるところは羨ましい部分はあります。諏訪は観覧できる場所がどうしても小さくなってしまう部分はあります。その代わり、山に響き渡る音の迫力というのは、他には真似できないですし、逆に他より賑わう場所が集中していることも魅力の一つだと思っています。

――これは諏訪の花火だけの話ではないのですが、日本の花火技術は世界でも高い評価を受けています。日本の花火が評価される理由はどこにあると思われていますか?

諏訪の新作花火競技大会だけではなく、日本では全国各地で花火の競技大会をやっています。そこで花火師さんたちが、切磋琢磨したことで日本の花火の技術が上がっているんだと思います。元々花火はヨーロッパが発祥で、日本に入ってきたものなのに、現在では色々な色や形を出せるようになっていたり日本の花火師さんたちのこだわりが評価されているのだと思います。

――日本人は花火好きですからね。では諏訪にとっての花火とはどういったものなのでしょうか?

諏訪は花火の町と言われていて、大切な観光資源です。全国的にも諏訪湖祭湖上花火大会と全国新作花火競技大会というのは、有名になっています。ですが、花火は知っているけど諏訪は知らないという方も多いのが実情です。なので、花火を見に来られる方々に、他にも諏訪大社や温泉、そして酒蔵など、こんなところがあるんだと少しでも諏訪の魅力を知っていただけるように努めています。

――諏訪市にとってもちろん花火は大事だけれども、それをきっかけにいろんなことに結びついていって欲しいと。では最後の改めて、諏訪の花火を見に来られる方々へ一言いただけないでしょうか。

毎年「来年はどうなるのかな?」と思われるような、毎年「諏訪に来たい!」と思われるような、仕掛けを作っています。もちろん花火自体の技術の向上というのは、花火師さんにお願いすることになるのですが、運営や構成というのは私たち実行委員会が変えていくことになります。何回来ても楽しかった、見に来て良かった、というように思ってもらえる花火大会にこれからもしていきたいと思っています。そしてもちろん、まだ諏訪の花火を見られていない方も、一度来られてぜひその迫力を体感していただきたいです。

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